M-1グランプリ2021の感想
夢を諦めないことの尊さ。
あるいは年齢を引き合いに出して夢を諦める事の出来ない呪い。
そんな人生においての重い重い一撃を 1組のおじさんコンビによってこれでもかと思い知らされた。
M-1グランプリ2021。月並みな感想でごめんなさい。凄かった。放送終了後の1時間はずっと涙がとまらなかった。本戦でこれだもん。毎回号泣不可避な最上のドキュメンタリーをお届けしてくる「M-1アナザーストーリー」は一体どうなってしまうのだろう。拝啓、"プレミアムスポンサー" サントリー様。どうか私めに南アルプスの天然水を20リットルほどください。
さて、ここからいつものように何様目線でファイナリストのネタ順に1組ずつ雑感を垂れ流してまいります。お笑い芸人でも放送作家でも業界関係者でもハガキ職人でもない只の地方の30男の戯言ですので、不快に感じられる方も居ると思われます。先に謝罪しておきます。すみません。(敬称略も重ねてお詫び申し上げます)
これはキングオブコントでの蛙亭の時も思ったけど、もうさ、トップバッターだからって理由で『基準点で』とかいう つまんないお決まり事は一旦捨てませんか?
……などとつい声を荒げてしまうほどに今回のモグライダーは会心の出来でした。『出順さえ良ければ…』とかうるさいです。一番手でも95点がつくような大会になってもらいたいです。マジで。M-1グランプリから賞レースの固定概念を変えていきましょう。これまで幾つもやってきたように。
まぁなんにせよ、モグライダーはもう黙ってても売れます。あんな綺麗に整った凸凹コンビをテレビ局がほっとくわけがない。いっぱいいっぱい出世払いをして、また年末にどこかノイズ混じりの それでいて上質なJAZZをあの場で聴かせてください。
②ランジャタイ
幸福な最下位。……なんだそりゃ。
でもこの言葉に尽きる。
去年、マヂラブ野田がせり上がりの土下座ムーブでM-1史上最速の掴みをキメていたが、国ちゃんはその先も先。呼ばれても立たない。パネルを見学。焦る伊藤ちゃん。最高だ。
そもそもランジャタイを点数に当てはまること自体がナンセンス。0か100の二択。最下位か優勝。そして今回はそのゼロの方だった。それだけの話。正直結果なんてどうでもいい。今回の最大の成果は、いつかの敗者復活戦で『国民最低』の評価を受けた彼らがTwitterトレンドの『ランジャタイ最高』というワードを日本を席巻した事。ホントざまぁみろです。これでイヤでも耳に 頭に そしてハートにこびりついたことでしょう、彼らのコンビ名が。これこそがグレープカンパニー仕込みの『名前だけでも覚えて帰ってください』です。
来年が彼らのラストイヤー。そして今回、二択のうちの一つが潰されたわけです。2度目以降のランジャタイは恐いですよ。皆様、これからの1年間でじわじわと胸元に刺さった毒に侵されてください。
③ゆにばーす
狂気を感じるような一切の隙の無いディベート漫才。観ててちょっと怖かった。川瀬名人が本気で獲りにきている……。来年で辞めてしまわれる……!惜しくも点数が振るわなかった事については納得がいかなかったり、ちょっとホッとしていたり。結局さ、居なくなってほしくないんですよこういう人には。ネタは完全完璧。だけど暫定ボックスではグッズグズ。エンディングでは 中学生みたいな純粋な顔で誰よりも笑っている。強烈な人間味のコントラスト。お願いします、また此処に来てください。そして辞めないでください。
④ハライチ(敗者復活枠)
私事ながら、このコンビはほとんど同年代。2人が歩んできた少年時代 青年時代 の思い出話の一つ一つに強い共感を覚える。だからこそ今回の賞レース最期のネタには痺れた。もうどうなってもいい、全てを此処に置いていくと云う覚悟。いままで見た事ないハライチがそこにはあった。嗚呼、また同年代が第一線から退いてしまう…。相撲好きが故に ふと稀勢の里の引退が頭をよぎった。
『土俵人生に一片の悔い無し』
『M-1グランプリありがとう、楽しかった!』
また僕の心の中の青春群像が幕を閉じたような気がした。
あ、でも『ハライチのターン』はずっと続けてよね。人生はまだまだ長いですから。
刺さる人には貫通するほど強烈に刺さる。
刺さらない人には全く刺さらない。
だけど、殺傷能力はそのままに、当人達が世間1人1人のこめかみに照準を合わせに行ったら……、
とか、まどろっこしい事考えていたらなんか正統派の評価受けてるんだから まぁ面白い。正統派?そんなわけあるか!
ただ此処で終わらないのが真空ジェシカ。キングオブコントのマント、もう腹ちぎれるほど笑った。
爪痕が深過ぎてこのケロイドはしばらく消えないかもしれない。もし " 父母 " があの場に来年揃ったら……、おーこわ。まーごめ。
⑥オズワルド
コツコツコツ………、
えーお世話になっております。
板に着いて僅か数秒で確信してしまうほどの王者に相応しい貫禄。
あ、"行った" な。と誰もが思ったはず。
1stのネタは間違いなく今大会全ネタ通してのトップ。
白状しますと、僕は2本目の失速の理由が僕にはよくわかりませんでした。極めてレベルの高い所での掛け合いのズレ?0コンマ数秒の間の取り具合? ごめんなさい。もうお手上げです。一旦やめさせてもらいます。
準決勝を観た時に 1番笑ったのがこの『肉うどん』。あのネタで配信チケット代の元はとりましたね。ラコステでのフェイント・2文字タイム・走行距離45万キロのワゴンR。どれもこれも好き過ぎる。
生粋のコント師だと勝手に思ってたコンビだったから個人的に1番の衝撃でした。もうやんなっちゃうよ、次から次に好きな芸人出てくるから。
なぁ、えみちゃんよ。
⑧錦鯉
「一文無し、参上!」で突如ピカピカのステージに現れたパチンコのスロット台おじさんが、1年後に同じピカピカのステージに寝っ転がって『Life Is Beautiful!』と叫んで1000万円を獲得する。
どんな映画よ。
この暮れにかけて、また多くの若手芸人の方々が夢半ばに解散していった。各々が前向きなツイートと共に、相方とお客さんへの感謝を綴る。
大好きなお笑いでこういう出来事が1番ツラい。
「30までやったのに…」
「40まで踏ん張ったのに…」
これは一般社会でも全然当てはまることだから。
そんな中、50に成っても辞める気が毛頭ない、そして相方もそれに付き合う気満々。
夢を諦めない尊さと 年齢を理由に折り合いをつける事の出来ない呪い。
時間差で胸中へ押し寄せてくるこの両極の想い。
『逕庭拳』って虎杖悠仁の専売特許じゃなかったの?
あのオジサンがデカい声で言う『どうせみんな、こうなるんだよ!』はあまりにも深い。
⑨インディアンス
去年の敗者復活からトップバッターで上がってきてから僕はこのコンビが大好きだ。
古くからのアンタッチャブル、並びにNONSTYLEフォロワーよ、もういい加減観念したほうが良い。
インディアンスは止まってくれない。貴方がたがモヤモヤしてる間に多分爆速で優勝かっさらってゆく
⑩もも
『なんでやねん○○顔やろ!』の気持ちの良い応酬。
ただこのパターンのネタだけじゃないらしいから末恐ろしい。
そして何より恐ろしかったのが、松っちゃんの『まぁ3年後優勝顔ですよね』という最上級の賛辞に対してノータイムでまもる君が言った「僕ら来年優勝するんで」でした。マジかっけーよ超新星。この部分何回も観た。
お笑い芸人でも業界関係者でも凄腕ハガキ職人でもない只のパンピーの駄文を読んで頂き本当に感謝致します。
M-1は芸人の人生だけではなく、それに魅了された茶の間のお笑いスケベ達の人生も毎年毎年変え続けております。今年はとうとう 嫁に『集中したいから』の一点張りで独りビジネスホテルに宿泊し、40インチのTVの前に半裸で陣取り ピザをかっ喰らいながら数々の痛々しい分析ツイートを沢山放流してしまいました。こんなオトナに誰がした。
ただ間違いなく言えることは、生きてると巻き起こる嫌なことやツラいことを、年末のこの興行が忘れさせてくれること。
同じように人生の長いマラソン中に ふと視える目印の電柱のようにM-1グランプリを捉えている同志達に窓越しよりグラスを傾けて、今日は一泊6000円でゆっくり眠らせて頂きます。
……どうも、ありがとうございました……。